@ryoppippi

半年強で533ポジションに応募してやっとUKでエンジニア就職を果たした話

6 Jul 2025 ・ 19 min read


こんに​ちは、​ryoppippi です。​はじめましての方は​はじめまして。

2025年6月から​ Stackone と​いう​UKの​AIスタートアップで​AI Engineerと​して​働いています。

この​記事を​書いている​時点では​働き始めて​ちょうど​3週間くらいです。​UK就職が​決まるまでの​経緯を​振り返り、​同じような​状況に​ある​方​々に​少しでも​参考に​なる​情報を​シェアできればと​思います。

TL;DR

現在の​UKの​job marketは​非常に​厳しい​状況に​あります。​私は533ポジションに​応募し、8ヶ月と​いう​長期間を​要して​ようやく​就職を​果たしました。​しかし、​適切な​アプローチと​継続的な​努力に​より、​最終的には​理想的な​ポジションを​獲得する​ことができました。

移住から​就職活動開始まで

UK移住の​経緯​(2022年2月 ~ 2024年4月)

2022年2月、​妻の​PhD candidateと​しての​移住に​帯同する​形で​UKに​やってきました。​配偶者ビザでの​滞在です。

妻は​2025年1月に​PhDを​取得しました。​1週間後には​ graduation ceremony が​あります!​おめでとう!

UKに​来てからの​約2年間は、​基本的に​日本の​会社と​リモートワークで​働いていました。2022年2月から​2023年6月まで​創業時から​在籍していた​日本の​スタートアップで、​その​後2023年12月までは​いく​つかの​スタートアップと​業務委託と​して​働きました。2024年1月から​3月に​かけては​日本一時帰国中に​某スタートアップで​フルタイムと​して​働きました。

しかし、​2024年3月に​日本の​会社を​退職する​ことに​なり、​同時に​所属していた​博士課程での​RAの​契約も​終了しました。​こうして、​ぽっかりと​無職の​期間が​始まってしまいました。

選択肢の​検討​(2024年4月 ~ 2024年9月)

2024年4月から​始まった​無職期間、​頭に​あったのは​以下の​2つの​選択肢で​した​:

  • 日本に​本帰国して​就職活動を​する​(Easy Mode
  • UKで​就職活動を​する​(Hard Mode

正直な​ところ、​日本に​帰国したい​気持ちが​強かったです。​物価も​安いし、​職も​見つけや​すいし、​ご飯も​美味しい。​イギリスで​職探しなんて無理ゲーだと​思っていました。

結果と​して、​うだうだと​毎日​家で​「日本帰りたいなー」と​呟き続ける​怠惰な​日々を​過ごすことになりました。​その間は​主に​OSS活動に​時間を​費やしていました。​前年の​業務委託である​程度稼げていた​ため、​生活費に​ついては​当面の​心配は​ありませんでした。

2024年の​OSS活動に​ついては​以下の​記事を​併せて​ご覧ください。 https://ryoppippi.com/blog/2024-12-31

就職活動の​実際

活動開始の​きっかけ​(2024年9月)

この​頃、VIM-JPyasunori projectと​いう​活動が​立ち​上がりました。​vim-jpの​話題の​中心ことYASUNORI0418を​中心と​して、​転職活動を​しよう!本を​書こう!​アウトプットを​出していこう!​お互いを​鼓舞し​あう​画期的な​取り組みです。​自分は​この​活動に​初めは​積極に​関わっていたわけではなかったのですが、​この​活動に​刺激を​受け、​ついに​ぐだぐだ生活を​脱して​イギリスでの​就職活動を​開始する​ことを​決意しました。

https://blog.tomoya.dev/posts/you-dont-know-yasunori-1/

しかし、​最初は​全く​手応えが​ありませんでした。箸にも​棒にも​引っかからない状況が​続きました。​LinkedInで​応募を​しても​1件も​返信が​来ない、と​いう​状況が​続きました。 自分の​場合は​結構​特殊で、​日本に​いる​ときは​一切就活を​したことがなく、​この​歳に​なるまで​常に​人脈を​通して​なんらかの​仕事を​紹介していただけていました。​その​ため手応えが​一切ない​この​状況は​とても​しんどかったです。​どこから​始めて​いいかもわからず、​五里霧中と​いう​言葉が​これほど合う​状況も​なかったでしょう。

履歴書の​改善​(2024年10月)

10月に​入り、​CVの​書き方に​ ATS​(Applicant Tracking System)​friendly と​いう​概念が​ある​ことを​知りました​(妻と​妻の​大学の​就職講座を​受けていて​知りました)。​これに​合わせて​ typst で​履歴書を​書き直しました。

また、​職歴を​より​詳細に​記述し、1ページに​収まるよう​工夫しました。​これらの​改善に​より、​ようやく​面接に​呼ばれる​機会が​増えてきました。

転機と​なった​出来事​(2024年11月~12月)

11月には​日本に​一時帰国し、vimconf および​ neovimconf に​登壇しました。​事前に​録画が​公開される​ことは​わかっていたので、​就活を​見越して​言語は​英語、​短くも​濃い​内容を​心がけました。​おそらく​やり​過ぎなくらい​時間を​かけて​準備を​しました。 この​登壇動画の​評判が​非常に​良く、​これが​きっかけで​面接に​呼ばれる​こともありました。技術的な​アウトプットの​重要性を​改めて​実感した​出来事でした。

vimconf 登壇記は​こちら https://ryoppippi.com/blog/2024-12-09

英語力の​壁​(2025年1月)

年末に​vimconfでの​発表が​きっかけで​盛り​上がった​ある​会社の最終面接に​臨みました。​UKから​帰国した​翌日、Londonの​WeWorkまで​足を​運びました。​感触は​良いと​感じていましたが、​「コミュニケーションに​難あり」と​いう​理由で​不採用と​なりました。​最終面接までは​温度感​高く​コミュニケーションを​取れていた​ために​かなり​ショックでした。

この​経験から、​技術力だけでは​不十分で、英語での​コミュニケーション能力が​最終的な​決め手に​なる​ことを​痛感しました。

初めての​オファー​(2025年2月)

2月に​入り、​10月に​一度​落とされた​UKの​AIリーガルテックの​ベンチャーから​再度面接の機会を​いただきました。​今度は​無事に​オファーを​獲得する​ことができました​!

並行して、​韓国の​AIベンチャー​(W社)から​ありが​たいことに​ 名指しで​面接(ヘッドハンティング) の​機会を​いただきました。​最終的に、​この​2つの​オファーを​競わせる​ことで、​それなりの​給与条件で​韓国の​会社への​入社を​決めました。​この​時点では​私は​単身で​ イギリスを​離れて​ソウルに​移住 しようと​考えていました。

この​時点での​戦績:

  • LinkedInの​Easy Apply経由306件
  • LinkedInの​外で​Formを​記入した​求人89件

合計395件の​応募を​行っていました。

方​向転換​(2025年3月)

韓国の​会社で​働き始めましたが、​企業文化や​業務内容が全く​合わないことが​判明しました。​3月の​2週目から​応募を​再開し、​4月に​本格的な​転職活動を​開始しました。​やはり妻と​共に​イギリスに​住む方が​良いと​いう​結論に​至りました。

皮肉な​ことに、​W社での​英語環境での​勤務経験に​より、英語での​コミュニケーション能力が​向上していました。​この​経験が​後の​面接で​活かされる​ことになります。

英語力の​向上と​新たな​展開​(2025年4月)

4月には​UKの​別の​AIベンチャーと​フランスの​某AI向けの​Webブラウザ会社​(L社)から​オファーを​受けました。​UKの​会社とはコーディング試験や​アーキテクチャ面談を​英語で​行いました。​W社での​経験に​より、​英語での​コミュニケーション能力が​大幅に​向上していました。​とても​嬉しかったです。

悩みましたが、​やりたい​ことを​考慮して​L社を​選択しました。​しかし​なんと​ 契約条件で​折り合いが​つかず ​最終的に​破談と​なりました。​UKの​会社は​オファー承諾期限が​過ぎてしまった​ため、​再び0からの​スタートと​なりました。

転機と​なる​リクルーターとの​出会い​(2025年5月)

4月末に​LinkedInで​たまたま​応募した​案件経由でと​ある​人材会社の​リクルーターの​方と​偶然繋がりました。​彼から​多くの​貴重な​アドバイスを​いただきました​:

  • 私の​経験と​スキルセットに​対して、​UK市場での​適正な​給与レンジに​ついての​アドバイス
  • 履歴書にOSSの​活動を​記載した​ほうが​良い。2ページに​なっても​問題ない

書き直した​cvは​こちら https://cv.ryoppippi.com/pdf

リクルーターとは技術面接も​行いました。Reactの​機能に​ついて、ブラウザで​URLを​入力した​際の​処理の​流れ、​ RAG​(Retrieval-Augmented Generation) の​仕組みなど、​幅広い​技術的な​質問に​対応しました。

彼からは、​「UKでの​就労経験が​ない​ことは​確かに​ハードルだが、​GitHubでの​活動を​見て​技術力の​高さに​注目した」と​いう​フィードバックを​いただきました。

履歴書を​更新した後、​彼は​私の​スキルセットに​合う​企業を​積極的に​探してくれました。​その​結果、​彼の​紹介で​ StackOne と​出会う​ことができました。​また、​自力で​もう​一社からも​オファーを​獲得しました。

給与条件は​ほぼ同等でしたが、​やりたい​ことや​会社の​成長性を​考慮して、StackOneへの​入社を​決めました。​この​リクルーターの​方は、​単に​求人を​紹介するだけでなく、​私の​キャリアを​真剣に​考え、​最適な​マッチングの​ために​尽力してくれました。​彼との​出会いが、​UK就職活動の​大きな​転機と​なりました。

戦績

最終的な​応募状況は​以下の​通りで​した​:

応募総数:533件

  • LinkedInの​Easy Apply経由410件
  • LinkedInの​外で​Formを​記入した​求人123件

8ヶ月間と​いう​長期間に​わたる​活動でしたが、​これだけの​数の​応募が​必要でした。

学んだ​こと

この​長期間に​わたる​就職活動を​通じて、​多くの​重要な​学びを​得ました。

市場の​現実を​理解する

現在の​UKの​job marketは​非常に​厳しい​状況に​あります。​特に​first jobを​獲得するのは​困難を​極めます。​現地での​就労経験が​ない​状況では、​技術力が​あっても​ 「経験不足」と​いう​理由だけで​書類選考で​落とされる ことが​日常茶飯事です。​この​現実を​早期に​理解し、長期戦 を​覚悟する​ことが​重要です。

履歴書の​重要性

CVには​明確な​形式と​最適化の​手法が​あります。ATS friendlyな​形式で​作成し、OSS活動や​技術的な​成果物を​適切に​アピールする​ことが​書類選考通過の​鍵と​なります。

応募手法の​見直し

LinkedInの​Easy Applyでは​採用される​可能性が​低いことが​判明しました。​より​手間を​かけて個別に​応募する​ことで、​成功率を​向上させる​ことができます。

人脈の​価値

優秀なリクルーターとの​出会いは​転職活動を​大きく​左右します。​技術力を​適切に​評価し、​市場価値を​正確に​把握してくれる​リクルーターとの​関係​構築は​非常に​重要です。

継続的な​学習と​アウトプット

技術的な​アウトプット、​特にOSS活動や​技術発表は、​自身の​技術力を​証明する​重要な​手段です。vimconfでの​登壇が​面接の​機会に​つながった​ことは、​その​良い​例でした。

終わりに

8ヶ月間533ポジションへの​応募を​通じて、​ようやく​UKでの​エンジニア就職を​果たすことができました。​この​経験は​決して​楽な​ものでは​ありませんでしたが、​多くの​貴重な​学びを​得る​ことができました。

ただし、​私の​場合は​配偶者ビザで​ビザの​心配が​なかった​分、​難易度は​相対的に​低かったと​思います。​学生ビザや​ワーキングホリデービザ、​skilled worker visaの​スポンサーシップが​必要な​方​々に​とっては、​さらに​高い​ハードルが​ある​ことは​間違い​ありません。

同じような​状況に​ある​方​々に​とって、​この​体験談が​少しでも​参考に​なれば​幸いです。​UK就職は​確かに​困難な​道のりですが、​適切な​戦略と​継続的な​努力に​より、​必ず道は​開かれると​信じています。

現在の​UKの​job marketは​確かにhorribleな​状況ですが、​諦めずに​改善を​続ける​ことで​突破口は​見つかります。​履歴書の​書き方​一つで​結果が​大きく​変わり、​良い​アドバイザーとの​出会いが​転機と​なる​こともあります。

最後に、​この​過程で​支えてくれた​妻、​アドバイスを​くれた​友人、​業務委託と​して​食い​扶持を​くださった​日本の​会社の​皆様、​そして​最終的に​私を​採用してくれたStackOneに​深く​感謝しています。


P.S. StackOneでの​仕事は​始まったばかりですが、​チームも​雰囲気も​最高で、​ようやく​自分に​合った​環境を​見つけられた​と​感じています。​長い​道のりでしたが、​諦めなくて​本当に​良かった。

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