こんにちは、ryoppippi です。はじめましての方ははじめまして。
2025年6月から Stackone というUKのAIスタートアップでAI Engineerとして働いています。
入社してすぐですが、すでにCTOにバチクソ褒められているので英語が読める方は見ていってください linkedin.com/posts/guillaum…
この記事を書いている時点では働き始めてちょうど3週間くらいです。UK就職が決まるまでの経緯を振り返り、同じような状況にある方々に少しでも参考になる情報をシェアできればと思います。
TL;DR
現在のUKのjob marketは非常に厳しい状況にあります。私は533ポジションに応募し、8ヶ月という長期間を要してようやく就職を果たしました。しかし、適切なアプローチと継続的な努力により、最終的には理想的なポジションを獲得することができました。
移住から就職活動開始まで
UK移住の経緯(2022年2月 ~ 2024年4月)
2022年2月、妻のPhD candidateとしての移住に帯同する形でUKにやってきました。配偶者ビザでの滞在です。
妻は2025年1月にPhDを取得しました。1週間後には graduation ceremony があります!おめでとう!
UKに来てからの約2年間は、基本的に日本の会社とリモートワークで働いていました。2022年2月から2023年6月まで創業時から在籍していた日本のスタートアップで、その後2023年12月まではいくつかのスタートアップと業務委託として働きました。2024年1月から3月にかけては日本一時帰国中に某スタートアップでフルタイムとして働きました。
しかし、2024年3月に日本の会社を退職することになり、同時に所属していた博士課程でのRAの契約も終了しました。こうして、ぽっかりと無職の期間が始まってしまいました。
選択肢の検討(2024年4月 ~ 2024年9月)
2024年4月から始まった無職期間、頭にあったのは以下の2つの選択肢でした:
- 日本に本帰国して就職活動をする(Easy Mode)
- UKで就職活動をする(Hard Mode)
正直なところ、日本に帰国したい気持ちが強かったです。物価も安いし、職も見つけやすいし、ご飯も美味しい。イギリスで職探しなんて無理ゲーだと思っていました。
結果として、うだうだと毎日家で「日本帰りたいなー」と呟き続ける怠惰な日々を過ごすことになりました。その間は主にOSS活動に時間を費やしていました。前年の業務委託である程度稼げていたため、生活費については当面の心配はありませんでした。
2024年のOSS活動については以下の記事を併せてご覧ください。 https://ryoppippi.com/blog/2024-12-31
就職活動の実際
活動開始のきっかけ(2024年9月)
この頃、VIM-JPでyasunori projectという活動が立ち上がりました。vim-jpの話題の中心ことYASUNORI0418を中心として、転職活動をしよう!本を書こう!アウトプットを出していこう!お互いを鼓舞しあう画期的な取り組みです。自分はこの活動に初めは積極に関わっていたわけではなかったのですが、この活動に刺激を受け、ついにぐだぐだ生活を脱してイギリスでの就職活動を開始することを決意しました。
しかし、最初は全く手応えがありませんでした。箸にも棒にも引っかからない状況が続きました。LinkedInで応募をしても1件も返信が来ない、という状況が続きました。 自分の場合は結構特殊で、日本にいるときは一切就活をしたことがなく、この歳になるまで常に人脈を通してなんらかの仕事を紹介していただけていました。そのため手応えが一切ないこの状況はとてもしんどかったです。どこから始めていいかもわからず、五里霧中という言葉がこれほど合う状況もなかったでしょう。
履歴書の改善(2024年10月)
10月に入り、CVの書き方に ATS(Applicant Tracking System)friendly という概念があることを知りました(妻と妻の大学の就職講座を受けていて知りました)。これに合わせて typst で履歴書を書き直しました。
また、職歴をより詳細に記述し、1ページに収まるよう工夫しました。これらの改善により、ようやく面接に呼ばれる機会が増えてきました。
転機となった出来事(2024年11月~12月)
11月には日本に一時帰国し、vimconf および neovimconf に登壇しました。事前に録画が公開されることはわかっていたので、就活を見越して言語は英語、短くも濃い内容を心がけました。おそらくやり過ぎなくらい時間をかけて準備をしました。 この登壇動画の評判が非常に良く、これがきっかけで面接に呼ばれることもありました。技術的なアウトプットの重要性を改めて実感した出来事でした。
vimconf 登壇記はこちら https://ryoppippi.com/blog/2024-12-09
英語力の壁(2025年1月)
年末にvimconfでの発表がきっかけで盛り上がったある会社の最終面接に臨みました。UKから帰国した翌日、LondonのWeWorkまで足を運びました。感触は良いと感じていましたが、「コミュニケーションに難あり」という理由で不採用となりました。最終面接までは温度感高くコミュニケーションを取れていたためにかなりショックでした。
この経験から、技術力だけでは不十分で、英語でのコミュニケーション能力が最終的な決め手になることを痛感しました。
初めてのオファー(2025年2月)
2月に入り、10月に一度落とされたUKのAIリーガルテックのベンチャーから再度面接の機会をいただきました。今度は無事にオファーを獲得することができました!
並行して、韓国のAIベンチャー(W社)からありがたいことに 名指しで面接(ヘッドハンティング) の機会をいただきました。最終的に、この2つのオファーを競わせることで、それなりの給与条件で韓国の会社への入社を決めました。この時点では私は単身で イギリスを離れてソウルに移住 しようと考えていました。
この時点での戦績:
- LinkedInのEasy Apply経由:306件
- LinkedInの外でFormを記入した求人:89件
合計395件の応募を行っていました。
方向転換(2025年3月)
韓国の会社で働き始めましたが、企業文化や業務内容が全く合わないことが判明しました。3月の2週目から応募を再開し、4月に本格的な転職活動を開始しました。やはり妻と共にイギリスに住む方が良いという結論に至りました。
皮肉なことに、W社での英語環境での勤務経験により、英語でのコミュニケーション能力が向上していました。この経験が後の面接で活かされることになります。
英語力の向上と新たな展開(2025年4月)
4月にはUKの別のAIベンチャーとフランスの某AI向けのWebブラウザ会社(L社)からオファーを受けました。UKの会社とはコーディング試験やアーキテクチャ面談を英語で行いました。W社での経験により、英語でのコミュニケーション能力が大幅に向上していました。とても嬉しかったです。
悩みましたが、やりたいことを考慮してL社を選択しました。しかしなんと 契約条件で折り合いがつかず 最終的に破談となりました。UKの会社はオファー承諾期限が過ぎてしまったため、再び0からのスタートとなりました。
転機となるリクルーターとの出会い(2025年5月)
4月末にLinkedInでたまたま応募した案件経由でとある人材会社のリクルーターの方と偶然繋がりました。彼から多くの貴重なアドバイスをいただきました:
- 私の経験とスキルセットに対して、UK市場での適正な給与レンジについてのアドバイス
- 履歴書にOSSの活動を記載したほうが良い。2ページになっても問題ない
書き直したcvはこちら https://cv.ryoppippi.com/pdf
リクルーターとは技術面接も行いました。Reactの機能について、ブラウザでURLを入力した際の処理の流れ、 RAG(Retrieval-Augmented Generation) の仕組みなど、幅広い技術的な質問に対応しました。
彼からは、「UKでの就労経験がないことは確かにハードルだが、GitHubでの活動を見て技術力の高さに注目した」というフィードバックをいただきました。
履歴書を更新した後、彼は私のスキルセットに合う企業を積極的に探してくれました。その結果、彼の紹介で StackOne と出会うことができました。また、自力でもう一社からもオファーを獲得しました。
給与条件はほぼ同等でしたが、やりたいことや会社の成長性を考慮して、StackOneへの入社を決めました。このリクルーターの方は、単に求人を紹介するだけでなく、私のキャリアを真剣に考え、最適なマッチングのために尽力してくれました。彼との出会いが、UK就職活動の大きな転機となりました。
戦績
最終的な応募状況は以下の通りでした:
応募総数:533件
- LinkedInのEasy Apply経由:410件
- LinkedInの外でFormを記入した求人:123件
8ヶ月間という長期間にわたる活動でしたが、これだけの数の応募が必要でした。
学んだこと
この長期間にわたる就職活動を通じて、多くの重要な学びを得ました。
市場の現実を理解する
現在のUKのjob marketは非常に厳しい状況にあります。特にfirst jobを獲得するのは困難を極めます。現地での就労経験がない状況では、技術力があっても 「経験不足」という理由だけで書類選考で落とされる ことが日常茶飯事です。この現実を早期に理解し、長期戦 を覚悟することが重要です。
履歴書の重要性
CVには明確な形式と最適化の手法があります。ATS friendlyな形式で作成し、OSS活動や技術的な成果物を適切にアピールすることが書類選考通過の鍵となります。
応募手法の見直し
LinkedInのEasy Applyでは採用される可能性が低いことが判明しました。より手間をかけて個別に応募することで、成功率を向上させることができます。
人脈の価値
優秀なリクルーターとの出会いは転職活動を大きく左右します。技術力を適切に評価し、市場価値を正確に把握してくれるリクルーターとの関係構築は非常に重要です。
継続的な学習とアウトプット
技術的なアウトプット、特にOSS活動や技術発表は、自身の技術力を証明する重要な手段です。vimconfでの登壇が面接の機会につながったことは、その良い例でした。
終わりに
8ヶ月間、533ポジションへの応募を通じて、ようやくUKでのエンジニア就職を果たすことができました。この経験は決して楽なものではありませんでしたが、多くの貴重な学びを得ることができました。
ただし、私の場合は配偶者ビザでビザの心配がなかった分、難易度は相対的に低かったと思います。学生ビザやワーキングホリデービザ、skilled worker visaのスポンサーシップが必要な方々にとっては、さらに高いハードルがあることは間違いありません。
同じような状況にある方々にとって、この体験談が少しでも参考になれば幸いです。UK就職は確かに困難な道のりですが、適切な戦略と継続的な努力により、必ず道は開かれると信じています。
現在のUKのjob marketは確かにhorribleな状況ですが、諦めずに改善を続けることで突破口は見つかります。履歴書の書き方一つで結果が大きく変わり、良いアドバイザーとの出会いが転機となることもあります。
最後に、この過程で支えてくれた妻、アドバイスをくれた友人、業務委託として食い扶持をくださった日本の会社の皆様、そして最終的に私を採用してくれたStackOneに深く感謝しています。
P.S. StackOneでの仕事は始まったばかりですが、チームも雰囲気も最高で、ようやく自分に合った環境を見つけられたと感じています。長い道のりでしたが、諦めなくて本当に良かった。